*いちご大福*-1
窓から見える雪景色。
心なしかいつもより、楽しそうに舞う粉雪は、なかなか積もらない。
地面に触れても尚、舞い上がり、まだまだ楽しまんとばかりに風に乗り、吹かれゆく。
そろそろ頃合いかと、ミカンの隣に置いていた、白き姫君におこたから手を出し、机のうえへと伸ばす。
優しく触っていても、貴女の感触は伝わって来ます。…形を崩さぬよう、慎重に着物を取り去って
じっと眠っているかのような静けさ、津波が襲う前の嫌に静かな水面の如く、只々たたずむあなたのそのオーラとでも言うおうか、独特の雰囲気に圧されて、自らの欲望を抑えることもできぬまま…
喉から手がでた。
まったく。
いい歳こいた大の大人が口ん周り真っ白にして、恥ずかしくないんかね?
と曇った窓の自分に言いたくもなくはないけれど、今はこれで幸せなのだ。姫君との時間は誰にも邪魔させない。
否、するものなどいやしないのだが…
貴女は本当に素晴らしい。どうしてそのような壊し難き美しさは生まれるのか。
元来、私は美しさとはぎりぎりのバランスの中に生まれうる、神秘的な可能性だと考えている。
あぁきっと貴女は純粋で汚れを知らぬ処女であろう。
それを自分が汚してしまうとは酷く恐ろしいことのようにも、思えたけれど。
止まらないから仕方ない。
まだまだ戯れは始まったばかりなのだ、
夜は長い。
外の雪はというと、先程よりも風はひどく、降り止む気配など微塵も見せてはいなかった。