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春雨
【純愛 恋愛小説】

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Rainy day vol,2-1

3ヶ月後

私も大分仕事に慣れ、日々を過ごしていた。
あの後、見合いに関する連絡は来ていない。相手の釣り書もまだ手元に届いていない。

数ヵ月先の予定まで入っている人たちが個人的な用件で会うのだからなかなか予定が合わないのだろう。
そんな事を考えながら日々を過ごしていた。


…ある雨の日だった

いつもの様に車でマンションに向かっていると人通りの多い往来に佇む青年が目に入った。
彼は傘もささず雨に打たれていた。

…どこかで…見たことがあるような気がした。


見覚えがある気がしたけれど…すぐには思い出せず、私は車で彼の近くを通りすぎた。

マンションの地下駐車場に車を止め、車から降りた時、
「…あ…」
急にさっきの青年が記憶の中の数ヵ月前に公園で喧嘩をしていた青年と重なった。
「道理で見覚えあるはずだわ…」
と、独り言を漏らし、清々しい気持ちでエレベーターに乗り込んだ。

その時、私は見合いの事なんて完全に忘れていた。


約一ヶ月後…夜

あれからあの青年を見てはいなかったが、初秋になり、私は平穏な時を過ごしていた。

゛ピンポン゛
チャイムの音に私は首を傾げた。
この家を知っているのは家族の一部だけで、仕事場の人には教えていなかったから。

「健兄?」
画面に映っている人を見て驚いた。
我が家の長男・健がそこに立っていたから。
『春美、入れて』
その言葉にオートロックを解除した。

゛ピンポン゛
今度は部屋のチャイムが鳴った。
゛キィ゛
「どうしたの?」
玄関の扉を開けて言った。
「久々に会った兄貴に『どうしたの?』は冷たくない?」
明るい茶色に染めた綺麗な髪に白の無地のTシャツ・ブラックジーンズを履いていくつかのアクセサリーを付けた整った顔立ちの兄は私の言葉に苦笑した。
「大学は?」
「まだ夏休み。」
「で、何の用?」
「今日泊めて」
兄の言葉に私は苦笑した。

「…何で?」
「近くにお前のマンションがあったから。」
「…駅の近くに家の系列ホテルなり何なりあるじゃない…。」
「仕事でこっち来てたんだけどさ、いつもホテルじゃ飽きるじゃねぇか」
兄は大学(経済学部)に行きながらモデルもやっている。
今は長期休暇中だから稼ぎ時なのだろう。
「…はぁ…」
軽く溜め息をついて
「上がって」と言ってリビングへ向かった。


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