可愛い後輩-1
最近ウザい奴がいる。
「せーんぱいッ」
ほら、また来た。
「幸先輩ったら。何でシカトするんですかー?
」
「…あたしに話しかけないで」
「…?」
私は首を傾げている後輩を背にその場を去った。
私の前に現れたこの後輩は、中学の頃同じ部活だった。
名前は宇佐美総太。今年この学校に入学してきた。
総太は人懐っこく、特に私に絡んできていた。彼は屈託のない笑顔で私に話し掛け、だから私も幸せな気持ちになれた。
でも、中学の頃とは違う。
ここにいるのは、あの頃の私じゃない。
「…ゴメンね、総太…」
後ろに立っている総太には聞こえないように小さく呟いた。
私はこの学校で2年間、孤独だった。
友人は1人しかいない。助けてくれるのは彼女と、教師という立場である幼なじみだけ。
それ以外は私には居場所がなかった。
そんな環境にも慣れ、あと1年我慢するだけだというのに、総太は私の前に現れた。
今更現れても困る。
だから私は彼とは関わらない。
その方が彼も幸せになるはず。
「ふーん。中学のときの後輩がねぇ…。いいんじゃない?仲良くしたって」
人の部屋で寝転がっているナオは、アイスを食べながらそう言った。
「そんな訳にはいかないよ。色々複雑なの、あたしだって」
「ほー。まぁ、お前の味方が増えていいと思ったんだけどな。お前がそう言うならしょうがないか」
うん、本当にしょうがないよ。