可愛い後輩-3
「河合さん、ちょっとどいて貰える?」
後ろにいたのはクラスの女子グループ。
そうだ、ここは廊下の真ん中。私達は隅に寄った。
「ありがとね」
そう言って彼女らは通り過ぎていく。去り際に話し声が聞こえた。
「河合さん、1年生に手出してるね」
「仕方ないよ、河合さん可愛いもの」
「でもさ、1年生はまだあの子のことよく知らないから」
「あぁ、そうだね。あたしだったら相手にしないもの」
そう言いながら彼女たちは笑っている。
泣くな。
その時。
「そんなこと言わないで下さい!」
女の子たちも私も声のした方を見る。そこには総太が怒った表情でいた。
「俺は幸先輩を中学の頃から知っています!幸先輩はすごい優しくて、バカ正直で、自分よりも人のために泣けるような人です!!だから先輩に謝って下さい!」
「……」
彼女たちは困ったような顔をして、それから小さな声で私に謝って去って行った。
「総太…。あたしは別に気にしてないのに…。」
すると総太は鼻息荒くして言った。
「先輩はダメです!先輩はバカにされたんだから怒んないと!!」
「うん…」
私がうなだれると、総太はため息をつく。
「先輩…。俺、先輩が俺を避けていた理由が分かりました」
「えっ…?」
私は顔を上げる。
「先輩、さっきみたいなことよくあるんでしょ?だから俺に迷惑かかんないようにって思ったんじゃないですか?」
先輩はそういう人だから、と総太は笑顔で言った。
バレてしまった。
でも、理由はそれだけではない。
私は怖かったのだ。