陽だまりの詩 6-5
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「今日は違う人でしたけど、いつもはすごく綺麗な先生が担当なんですよ」
「へえ」
奏が昼食を終えると、また談笑する。
なぜかいつも、奏と話すとネタは尽きず、時間はあっという間に過ぎて行く。
「春陽さんは、その綺麗な福祉士さんのこと、気になります?」
奏は複雑そうな顔を見せる。
「アホか」
俺はそう言って奏を小突く。
なに言ってんだ、奏。
俺はお前以外気にならないんだよ。
***
帰宅すると、荷物を置いてすぐにシャワーを浴びる。
普段は美沙と二人で暮らしているが、もう数ヶ月、一人でこの部屋に住んでいる。
高校を出てすぐに入居したこの部屋は、もうすっかり自分の生活の拠点となっていた。
バスルームから出て、すぐに着替えた後、ふと部屋を見渡す。
普段は帰宅すると美沙がテレビを見ているリビング。
常にテーブルには簡単な料理が並べてあった。
美沙はいつも、そうやって俺が帰るまで待ってくれていた。
だが今はずっと一人で、しんと静まり返った部屋に俺は立っている。
寂しい。
寂しがり屋な俺には実に耐え難いものだ。
すると、待っていたかのようにテーブルに置いてある携帯が震える。
「……奏か?」
最近は仕事以外は奏か美沙しか電話をかけてくる相手はいない。
虚しいことだが、学生時代はバイトばかりでまともに遊んだ記憶はない。
母さんのことを知って敬遠する人間もいたし、俺自体、あまり友達に興味はなかった。
携帯を開くと、思いがけない相手からの電話だった。