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きらいなところ
【大人 恋愛小説】

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甘いところ-1

絶対、年下とは付き合わない!と決めていた。それなのに……。

「来ちゃった」

ドアを開けると男のくせに可愛くそのセリフを言うキミがいて、両手には紙袋と人一人入れそうな大きなカバン。

だいたいこんな時間にチャイムを鳴らさないで、コンコンとドアを叩く人はキミしかいない。

溜め息がもれる。

「来ちゃったじゃないでしょ!」

腰に手を当てて、子供をしかるように言葉を浴びせるが私の言葉など耳に入ってない様子。

「いい?入っても」
「………」

ほらね。
もう私はキミのペースに巻き込まれている。

「いいわ。ここじゃ何だし。入って」
「やった。お邪魔します」

私は今年の四月からこのマンションで一人暮らしを始めた。

だから、キミが部屋にあがるのは別に問題ない。

だけど、こんな時間にどうしたんだろう。

何かあったのだろうか。

って、これ女の私がいうセリフ!?
普通逆でしょ?

リビングより手前にある自室で、キャミソールにショートパンツという定番部屋着にパーカーを羽織った。

猫っ毛で背の高い、キミを呼ぶ。

「亮?」
「ここ」

返事のあったリビングに行くとキミは持っていた紙袋を私に差し出した。

「はい、これお土産」
「何?」
「灯の好きなバームクーヘン」
「あ、ありがとう」

こんなんじゃ騙されないとか思いつつ、顔は素の笑顔になってしまう。

単純だな、わたし。

「お茶いれるわね。何がいい?」
「何でも」

まだキミはどこにも座らないでいる。

「じゃあ、コーヒーいれる、底がジャリジャリするくらい砂糖たっぷりのやつ」

ハハッと乾いた声でキミは笑う。

キミの味覚にも私の味覚にも合わないコーヒーをたまに私は嫌がらせみたいに、いれる。

「今日、瑞希に会った」

はい、とテーブルに二つカップを置いた。
ありがとうとキミは私がソファーに座ってから真横に座った。

ん、甘い……とコーヒーを一口飲んでそう漏らす。

同じコーヒーをキミは何事もないよう飲んでる。


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