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星降る夜の神話
【少年/少女 恋愛小説】

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星降る夜の神話 其の壱-1

FirstStory:銀杏

『星降る夜に願い事をすれば必ず叶う』

 小さい時、曾祖母にそう教えられた。いや、まだ私は幼いかもしれないが、今よりずっと、ずぅっと幼い頃。…そう、五歳くらいだろうか。そんなに幼かったのに、何故か鮮明に覚えている。
 曾祖母は私が小学に上がったとき、亡くなった。明治から大正、昭和・平成と生きた曾祖母は、とても綺麗だった。…ただ、亡くなる前に曾祖母が呟いた、一つの言葉…否、名前が私の心の中に残っている。臨終間近に呟いた、愛しむような、それでいて哀しみを含んだ名前を。

 あれから九年。私も、今年十四になった。来年は三年生になり、中学校の最高学年になるのだ。そんな夢のような話なんか、忘れて勉強をしなさいと母にいつも叱られている。でも、『星降る夜』の話は忘れられない。だって、あれは本当の話なのだから。曾祖母の『願い事』は、確かに叶えられたのだと本人から聞いた。

『星降る夜に願い事をすれば必ず叶う』

 けれど、それはたった一つだけ。たった一つ、心からの願いだけ。でないと、星は叶えてくれない。
 子供心にそれが不思議だった。だから、一度だけ聞いてみたことがある。何故、一つだけなのかと。
 曾祖母は、真剣に聞いた私の頭を優しく撫でながら答えてくれた。
『銀杏(ぎんず)、…欲張ってはいけないよ。本当に、本当に大切な願い事や、どうしても自分の力では叶えることができないコトを願いなさい。自分の力で乗り越えようと頑張らなくては、お星様も愛想をつかしてしまうよ』
 優しい笑顔で、私の大好きだった笑顔で曾祖母は私を見た。
『あいそ?』
本当に幼かった私には、その単語の指す意味
が何か分からず、繰り返しながら曾祖母を見た。
 曾祖母は、そんな私の様子を見ながら数回、私の頭を撫でた。けれど、その単語の意味は教えてくれず、結局自分で探して理解したのだ。…曾祖母が亡くなった後に。

「銀杏ー。遅刻するわよ」
 回想に更けていると、一階から母が叫んできた。そんなに時間が経ったのかと時計を見てみると、
「ー…7:50」
遅刻する。家から学校までは、どんなに走ろうと私の足では30分かかる。自転車は、学校に許可して貰っていない為、駄目だ。
「ヤバ…ッ」

バンッ

ガタガタガタッ

 急いで階段を駆け降りる。辛うじて制服を着ていたことは、天の助けと言えるだろう。
「銀杏、ご飯は?」
「要らないっ!行ってきまーす!!」

ぱたぱたぱた、

ガチャ。

「うぁぁー。遅刻するーっ」
 周りを見渡すが、やはり誰もいない。どうやら『お仲間』は居ないみたいだ。虚しく、夏独特の熱くて乾燥した風が頬を撫でる。
「う゛ぅ……」
諦め、歩こうとして足を緩めた。はあっ、という深い溜め息と共に。

「あっれぇー?石野。何で居んの?」


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