星降る夜の神話 其の壱-10
「あぁ。やっぱり付き合ってたんだね」
「へ…?」
怒って嫌われる覚悟で由香に打ち明けたのだが、想像していなかった返事に戸惑った。
「まぁ、そんな感じはしてたからね」
それより、と肩をしっかりと掴み、由香が私を揺さぶった。
「正登先生、銀杏の叔父さんなんでしょう!?彼女とか居るの!?」
「はぁ!?」
ー正くん?
いつの間に変わったのかと、由香を見る。と、
「いやぁん。内緒ぉ」
語尾にハートマークが付きそうな返事が返ってきた。
あんなのの何処が良いのかは分からないが、まぁ、本人は本気みたいだからいいか。
「私も、その『星降る夜』やってみようかなぁー?」
教えてね。と、にこにこ笑いながら言われてしまった。
お曾祖母ちゃん、貴方のお陰かなぁ?私の『願い』が叶ったのは。…有り難う。
雲一つ無い空を見上げ、大きく息を吸う。
「ところでさ、」
その横から由香が尋いてきた。
「曾祖母の言った『名前』って誰な訳?」
「さあ?そんな名前の人居ないから分からなかった」
探したことはある。お母さんやお父さん、親戚の色んな人に聞いた。けれど、結局見付からなかったのだ。
「ふーん?何て名前?」
「えっと…、確か」
「銀杏ー!!帰ろーぜ」
私の声を消してしまう程の大声で、鷹人が叫んできた。
「はいはーい!」
慌てて駆け出し、名前を言うのを忘れたことに気付いて由香に向かって叫んだ。
「『謙(ゆずる)』だったと思うー!!」
「謙…?奇遇だなぁ」
駆けていった銀杏を面白そうに見つめながら、由香は呟いた。
「私の曾祖父と同じ名前だ」
ーendー