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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.7-10

ふう、と一息ついて思い出す。授業で指されて板書きをして振り返った瞬間、啓介の縋るような瞳が目に焼き付いて離れない。
反らすしか出来ない自分の視線が悲しくて、こんなにあからさまな態度をとった自分を後悔する。
好き、だから。
啓介は終わってしまったと思っているだろうが、自分はまだ彼に恋しているから。
全てなかった事にして、あの頃の様になれたらどれだけ良いだろうか。好き、と言えば当然の様に、好き、と返ってくる関係に戻れたら。
視線を反らして席につき、俯いてしまった自分の背中越しに啓介の視線を感じた。以前はくすぐったく感じていたのに、今では自分を責めているように感じる。あまりお喋りじゃ無い啓介だから余計に怖い。

身体を許してしまった私なのに、きっと最後まで責めようとしないんだろうな

じわりと視界に霧がかかる。足を抱えて丸くなったために剥き出しになったひざ小僧。ぽたりと涙が落ちてつぅーっと足をつたって行った。
館内の誰にも気付かれないように声を押し殺す。我慢しようとすればするほど喉の奥が熱を帯びて痛みを発する。こうして泣くのは何度目だろう。
優しい啓介に悟られないように、わざと冷たい態度で接していた。あれから半年、事あるごとに啓介は謝ろうとして来る。でも聞きたくない。
さようなら、ってハッキリ言われるのが怖いから。だから…………こういう状態になったら逃げなくては。

自分を覆うように出来た黒い影。赤い瞳で見上げると困っ顔をした啓介がいた。





お互いの視線が絡むのだが言葉は何も生まれない。
だが、やがて意を決した啓介の唇が震え、緊張と共に言葉が零れ落ちた。

「ごめん」

膝を着き、掌を床に着いて頭を下げた。さらさらの黒髪が揺れていた。
「謝って許される話じゃないのはわかってる。でも」
俯いた顔をあげ、啓介は正面から英理子を見た。ぶつかってしまった視線を英理子は慌ててそらすように下を向く。
「でも、俺は」
啓介の唇が心臓を震わせる。ちらりと見上げると真剣な眼差しに射られたような錯覚を覚える。視線をそらせない。英理子は目の前の真剣な啓介をただじっと見つめた。
「ごめん。まだ…………好きなんだ」
体がどんどん熱くなる。
好きなんだ、って、まだ私を?英理子は眉間にシワを寄せて苦しげに言った啓介を見つめ続けた。
「俺が傷つけたのに、またよりを戻そうなんて狡いのはわかってる。返事はいらない。ただ、償わせてくれ」
一言一言を絞り出すように啓介は言葉を紡ぐ。この半年、考え続けてきた気持ちに終止符を打とうとしていた。
「罵ってくれてもいい。目の前から消えろと言うならば喜んでいなくなる。英理子の気持ちが軽くなるのならなんだってするよ」
ごくり、と喉仏が上下する。一瞬が永遠に感じるほど言葉を待つ者には長かった。全開の窓からは初夏の爽やかな匂いが入りまじる。


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