陽だまりの詩 4-1
ジーワジーワと蝉が鳴き、木々は濃緑の葉に覆われている。
ジリジリと背中に太陽の光を浴び、嫌でも汗が体を伝う。
季節は真夏。
俺は、今日も仕事を終えて会社を出る。
「うわ、あっちい」
すぐにネクタイを外して上着を腕に掛ける。
「まだまだ慣れねーな…」
ハンカチで汗を拭いながら駅まで歩く。
奏ちゃんと美沙は、連日のこの炎天下でも外に出ることもなく病院で涼んでるんだろうな。
まったくうらやましいやつらめ。
そんなことを考えながら歩いていると、突然携帯が震える。
だが、ディスプレイで確認しなくても大体誰かはわかっている。
俺はすぐに通話キーを押して携帯を耳に当てる。
「……もしもし」
もうすっかり聞き慣れた弱々しい声が耳に入ってくる。。
「よう」
「あの…お仕事はもう終わりましたか?」
「ああ、さっき出たとこ」
「じゃあ、今日は来られるんですか?」
「そうだな、寄っていくよ」
「よかった、じゃあ待ってますね」
「おう」
電話を切ると、ついにやけてしまう。
美沙が夏休みに入る前に、俺たちは番号を交換した。
その行動自体に大して深い意味はなかったが、奏ちゃんは顔を真っ赤にしながらとても喜んでいた。
そして、病院に来てほしいときは、毎回照れながらも電話をかけてくるようになった。
俺たちがここまで仲良くなったのは、やはりこの間の美沙の一言が大きかったらしい。
俺たちは少しずつ、だけど順調に仲を深めていった。