陽だまりの詩 4-2
***
「お疲れ様です」
病院の前で奏ちゃんが車椅子に座って待っていた。
「ばか、暑いだろ!早く入ろう」
奏ちゃんはいつからここにいたのか…
まさか、電話してからじゃないだろうな…
額には汗で前髪が張り付き、顔も赤い。
「大丈夫か?」
「はい、ちょっと調子に乗りすぎました」
いつものようにえへへ、と笑う。
車椅子を少し早く押すと、彼女は心なしかフラついてる感じもする。
病室に戻ると、冷蔵庫に入っていた水を飲ませる。
「ちょっとタオル濡らしてくる」
「いえ私が」
「いいから…悪かったな、待っててくれたんだろ?」
「あ、はい、待っていたほうが天道さんが喜ぶかなと思いまして」
「……」
キュンと胸が疼いた。
***
ジャー…
タオルを濡らしながら考え事をする。
もちろん奏ちゃんのこと。
俺は彼女に惹かれている。
否定はしないし気持ちは揺らがない。
だが奏ちゃんはどうなんだろうか。
初めて会ったときとは比べ物にならないほど親しくなった。
だけど俺は、兄のような立場なのかもしれない。
天道さんは私のこと…恋愛対象になりますか?
そんなことも言われたけど、俺達の年の差は近づくわけでもない。
どうすれば、こんな風に悩まなくて済むのだろうか。
奏ちゃんだけは絶対に苦しませたくない。
俺は…
ジャー…
「あ、水出しっぱなしだ」
慌てて蛇口を閉める。
少し考えすぎた。
急いで戻らないと。
駆け足で病室に向かった。