冷たい情愛Die Sekunde-1 -1
季節をいくつか越えて…
私にとって、遠藤くんと過ごす時間は自然なものになっていた。
お互い仕事が忙しく平日は殆ど連絡することが出来ない。
その分、週末はそれを補うかのようにずっと一緒に過ごしてる。
都心の真ん中にある彼のマンションは、部屋こそ広くないが…
逆にその狭い空間が、彼との距離を感じさせず私はそれが嬉しかった。
かといって、べったりとくっついている訳ではない。
彼は仕事を持ち帰ることも多く、部屋で資料を作成したりする。
その横で、私はのんびり読書する。
若ければ、こんな過ごし方は物足りないはずだろう。
しかし、今の私と彼には、こんな休日が一番居心地よいのだ。
彼は眼鏡をはずし、パソコンを閉じた。
「やっと終わった」
彼がそう言うと、初めて私とキスをする。
「お腹空かない?今日は何作ろうかな」
「ナポリタンがいいな」
彼は、何故かナポリタンが大好物だ。
作るのは簡単なので私も助かるが、男の好物とは何だか変な感じがする。
彼は、私がケチャップを両手で絞る動作を見るのが好きらしい。
「その姿が小動物みたいだから」
という、訳の分からない理由なのだ。
食べ終わった後、口の周りがケチャップの赤に染まる彼の顔。
私は笑いをこらえるのが大変だったりする。