冷たい情愛Die Sekunde-1 -8
デパートの地下で食料を買い、料理でも作って待っていよう…
材料を買占め、彼の部屋へ入った。
彼の部屋で過ごすことは多かったが、合鍵は貰っていない。
彼も渡そうとはしないし、私もねだろうとは思わなかった。
なので、彼の部屋に一人で入るのは今日が初めてだ。
仕事で忙しいにも関わらず、彼の部屋はいつも整頓されている。
相変わらず、殺風景な部屋。
上着を脱ぎハンガーに掛け、部屋着に着替える。
ハンガーをいつもならキッチンとリビングの境のドアに掛けるのだが…
今日は料理をするので、臭いが付かないようクローゼットに仕舞うことにした。
クローゼットを開く。
男性の部屋にしては、クローゼットが大きい。
部屋の一面の壁が全てクローゼットとなっている。
これだけ部屋が整頓されているのだから…
服以外にも、荷物はほぼここに収納されているのだろう。
いつも、ここからバスタオルや寝衣を出してくれる彼。
(ペンギンのぬいぐるみも、この中から転げ落ちてきたんだっけ…)
中には…シンプルだけれど品のある、スーツがたくさんかけてある。
私のジャケットを掛けようとしたが、高さがあり上手く引っかからない。
「きゃっ」
手元が狂い、クローゼットの中に上半身が倒れこんだ。
「いたっ」
額をどこかにぶつけてしまい、私は痛さに声を出した。