冷たい情愛Die Sekunde-1 -6
「そう…」
彼はそれしか言わない。
私は、不安なのだ。
仕事も…それに伴うプライベートの変化も。
「ますます会えなくなっちゃうし」
これが私の一番の本音だ。
仕事は好きだし、体を壊しそうになるくらい限界まで努力した時期もある。
だから、仕事を辞めるなど考えられないくせに…
どこかで、彼が将来…私を伴侶として必要としてくれるのではないかと…期待してしまっている。
「紘子は、もっと仕事したいんだろ?」
「うん」
「だったら、会えなくなるとか…そんなこと心配しなくていいよ」
「だって…」
「少し会えなくなったところで、変わらないから」
彼は穏やかに言った。
それは、高校時代から今までの時間を考えればたいした時間ではない…という意味なのか。
それとも、愛情は強く深いものだから大丈夫だと…言ってくれているのだろうか。
彼は私の返事を待たずに、言葉を再び発した。
「誰かに頼らなければ生きていけない人間は…幸せにはなれないと思う」
意外な言葉だった。
彼が、抽象論を語ることは殆どないからだ。
それに…突き放されたように感じられる。