冷たい情愛Die Sekunde-1 -5
私には、その重責に耐えられる精神力があるのだろうか。
それに、チームリーダーになれば…
今までのように、片山に甘えることも出来なくなる。
たとえ、私が途中からの代打のリーダーで…
片山は会社の中核プロジェクトのリーダーという違いがあったとしてもだ。
「なんだ、その顔は…断るとは言わせないぞ」
片山の言葉は、今までにない厳しさがあった。
私は、片山の言わんとしている事が分かったような気がした。
今までは、これほどに仕事の出来る片山でさえ…
私との間に、男女の何かしらの感情があり、厳密には公私を区別できていなかった部分があった。
しかし、私を自分の代打の役に据えるということは…
男女の感情は、これで終わらせるという意味でもあるのだ。
私を嫌いになったという意味ではなく…
そんな感情を理性で潰し、私を仕事人として引き上げるということなのだ。
私は、こうして知らぬ間に…男に、育てて貰っているのかもしれない。
「分かりました」
私は、そう答えることしか出来なかった。
・・・・・・・・・・
平日にも関わらず、私は我慢できずに彼に会いたくなってしまった。
「今日、どうしても会いたくて…」
『分かった、どうにか仕事終わらせるよ』
電話越しに聞こえる、彼の穏やかな声。
私はすっかり、彼に甘えている。
少し恥ずかしかったが、それを受け入れてくれることが嬉しくもある。
自分から誘った癖に私のほうが結局遅くなり、彼が新宿まで出向いてくれた。
食事を注文し、やっと話を切り出す雰囲気になった。
私は今日の出来事を、早口で彼に伝えた。