冷たい情愛Die Sekunde-1 -4
私はまだ、彼の家族や子どもの頃の話を聞いたことがない。
私もあえて聞こうとは思わなかった。
素行調査をしている様だし、それに…
結婚を意識していると思われたくなかったから。
でも、彼の家族の事とか…そろそろ聞いてみたいな…
少し、そんなことを思った。
・・・・・・・・・
ある日、上司の片山が私を小部屋へ呼び出した。
私が所属するチームのプロジェクトは、順調に走り出していた。
立ち上げは大変だったが、ここまでくれば後は流れに乗るだけだ。
まだ公にはなっていないが、既に次のプロジェクトが立ち上げられるとも聞いていた。
「俺はまた、次のを担当することになった」
まあそうだろう…片山は優秀だ。
「でな、お前には物足りないかもしれないが…」
片山の話は…今のプロジェクトのチームリーダーを私に…というものだった。
物足りないどころではない。
途中からとはいっても、リーダーの重責は計り知れない。
片手間に出来るような役ではない。
「勿論、やるだろ?もう部長とは話がついてるんだ」
部長も片山も、私を認めてくれた上でチャンスを与えてくれている…
そう言えばドラマのようで格好はいいが、現実はそう甘くない。
チャンスを与えられたのではなく…
問題なくプロジェクトを終了させる重責がある、ということなのだ。