冷たい情愛Die Sekunde-1 -11
智子から聞く、彼の昔の姿を想像し…私は何だか楽しくなる。
制服も勿論分かっているので、彼の高校時代が手にとるように想像できる。
私は智子に聞いてみた。
「遠藤くんのさ、家族とか地元の話とか…聞いたことない?」
『ああ…東北出身だよねえ確か。大会にも親が見に来てた記憶ないなあ…』
「そっかあ…」
智子が何か知っていれば聞いてみたいと思ったのだが…それは叶わなかった。
今度、自分の夫も含め4人で食事でも行こうと言い、彼女は電話を切った。
私はそのまま、アルバムを開くことなく元の位置に戻した。
そのすぐ後、チャイムの音。
「遅くなってごめん」
低く柔らかい声…私の大好きな人。
「仕事、大丈夫だった?」
「ちょっとトラブルがあって、でももう大丈夫だよ」
彼がスーツを脱ぐ。
クローゼットを開けたその瞬間…
彼が、一瞬動きを止めた。
「あ、ごめんなさい…スーツ掛けるところが無くて…勝手に開けちゃったの」
「いいよ。皺になると困るしね」
彼は振り返り、私に笑顔でそう言った。
しかし…