ベルガルド〜金髪の女、漆黒の男〜-7
「ベル!!?この男、アーレン城の研究所で見た…っ」
「あぁ、間違いない!!漆黒の男だ。」
「嘘でしょ…?」
私は目の前の光景を信じられずにいた。
「フェイ、僕はもう休むから、適当にこの子達の相手してよ。」
「はい。主の望みならば。」
漆黒の男前に進み出て、バーバラは後ろへ振り返った。
「おい、女!!ちょっと待て!!」
ベルガルドが必死の形相で睨みつける。眉間にシワを寄せ、今にも噛み付きそうだ。
「俺はベルガルド=レオーベン。魔族の王だ!!」
洞窟内の空気が一瞬にして凍った。
「あの小僧…今なんて言った?」
「ま、魔族の王とかなんとか…冗談だろ」
「けどベルガルドって言やぁ、魔王だぜ!」
「名前だけじゃわかんねぇよ!!」
「それに、アーレンと手を組むわけがねぇ」
ざわざわと一気に騒がしくなったが、ベルガルドとバーバラの間に流れる緊迫した空気は少しも揺るがない。まるで世界に二人しかいないように、周りが見えていない。
「お前が俺の父王を殺したのか?」
「初めましてベルガルド…君に会ったのは初めてだけど、君のこと、知ってるよ。」
バーバラの顔から表情が消えた。
「おじさん…いや、バーグデルド…。」
「な…っ」
「僕が殺した」
それだけ答えると、バーバラは身を翻して、通路へと歩き出す。
「待て」
少しの間、硬直していたベルガルドはやっとのことで言葉を絞り出した。
「待てと言っている!!!!」
「僕に追いつきたいのなら、フェイを倒してからだよ。」
そういい残して、バーバラは遠ざかっていく。
「くそっ…」
ベルガルドは魔力を解放しようとする。
「ダメだ!!ベル!」
カイは腕の拘束が解けぬままに、ベルガルドに体当たりした。
「!!?」
二人はぶつかった衝撃で、地面に倒れこむ。
「カイ、邪魔するな!俺はあいつを…っ!!」
「ここはヒトが多い!!こんなところで魔力を解放したら…」
ベルガルドはとっさに私の方へと目を向けた。
しかし。
私は、ベルガルドを見てはいなかった。
「どうして…?」
私の目線の先には全身を真っ黒に包んだ漆黒の男が立っている。
あの美しい女性バーバラに“フェイ”と呼ばれていた男。
しかし、それは本名ではないと、知っている。
「フェルナンド…お兄様…」