ベルガルド〜金髪の女、漆黒の男〜-6
「どうして、何をそんなに耐えているの…?」
「お前が言ったんだろ」
「え?」
「“許可なしに魔術を使うな”ってよ」
「ばかだね…」
今の台詞はベルガルドに向けたのか、自分に向けたのか
(ごめん、ベルガルド。あたし、あなたの事誤解してた。誰かれ構わず、殺すような奴じゃないんだって、あんたのことちゃんと信じてなかったんだね。)
「許可するわ。もう、限界でしょう?」
私は立ち上がり、黒装束を脱ぎ捨てた。
会場にいる者が一斉に私を見るが、その視線にも構わず、私はステージへと突き進む。
全てが一瞬の出来事のようで、誰も私を止めることはできない。
「トゥーラさま…?」
セシルが信じられないというように目を剥いている。
私はステージに上り、セシルとカイには目もくれず、バーバラと呼ばれる女の前に立つ。
「私はトゥーラ=アーレン。あなたを拘束し、本国へと強制連行します。」
その声は、静まりかえった洞穴内で、反響し、自分の耳にも届いた。
カイ、そしてベルガルドに勇気を貰ったからだろうか、こんなに堂々としていられる理由を自分でも分からなかった。
「罪状は、教会での私に対する暗殺未遂。なお、科学者を殺し、アーレン国に反逆を試みた罪に対しても今後追究いたします。大人しく投降なさい。」
『異教徒だ!!!捕らえろーーー!!!』
一斉に村人達や、教団の幹部が立ち上がり次々に叫び始めた。
「お黙りなさい!!今ここで私に何かあれば、アーレン国との全面戦争は避けられませんよ。私が女王であることは疑いようのないこと…」
私は首にかけてあった、アーレン国王家の紋章が刻まれたペンダントを取り出した。
この場にいる全ての者に動揺が走る。
「本当の女王だ…」
「まずいよな、どうするんだ。」
「だけど、今始末しておいた方が…」
口々に各々の意見を話し始めている。
「みんな、静かにしてくれるかな?」
バーバラは、少しも驚くことなく、なおも微笑んでいた。
「僕、疲れたから眠るね。」
「は?」
私は予想外の返答に、間の抜けた声を出してしまう。
「ちょっ、何言って…」
「おいで、フェイ。」
通路の影から、人影が姿を現した。
「お呼ですか、主。」
漆黒の髪、漆黒の目。上下共に、黒いレザーの衣服で身を包み、すいこまれそうな真っ暗な闇をその瞳に湛えている。
表情は少しも動かず、綺麗な姿勢で男が歩いて来た。
「お前は!!」
黒装束を脱ぎ捨てたベルガルドが叫びながら、こちらへ駆けて来る。