投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ベルガルド
【ファンタジー その他小説】

ベルガルドの最初へ ベルガルド 44 ベルガルド 46 ベルガルドの最後へ

ベルガルド〜金髪の女、漆黒の男〜-4

(え…)

ぎりり、と横でベルガルドの歯軋りする音が聞こえる。
彼の声に出さない怒りが、空気感染してくるように思えた。

(セシルと、カイ…?)

私たちが追いかけて来た二人が、後ろ手に縛られ、ステージ上に引っ張り出された。

「ちょっ…」
「待て、トゥーラ。」
「で、でも!」

反抗するように、ベルガルドの方へと鋭い目線を送る。が、彼の表情を見て、それ以上の言葉を紡げなくなった。
彼の赤い瞳には、かつて見たことの無いくらい、熱く焼けるような憎悪の炎が宿っている。
その鋭く逆立った赤毛は地獄の業火を思わせた。

(ベルガルド…)

彼も自分の怒りを抑えるのに必死なのだ。

『この者達は我らの未来を阻止しようとした罪人である!』
アナウンスが声高々に、ドーム内で響いた。
岩板に音が共鳴し、マイクのような役割を担っている。

『しかし、この者達はアーレン国女王の勅使。むやみに殺すことは、両国の関係に支障をきたしかねない!!よって、』

ごくり。
と、周囲のヒト達が唾を飲み込む音が聞こえるようであった。

『ヨンウォン教の巫女により、記憶の抹消を行う!!!』

『おぉおおおぉぉ!!!!』
全員が狂喜の歓声を上げた。

(な、なんですって…?)

ステージ上のセシルとカイは、目を見開き、呆然としている。


「こんばんは、みんな。」


しぃんと、声が、止んだ。


ステージ上に新たな人影が現れる。
重力を感じさせない軽やかさで、しなやかに歩み出たその人物。

金色の長く真っ直ぐな髪の毛を躍らせ、真っ白の陶器のような肌を煌めかせる。黒いイブニングドレスに身を包んだ美しいその女性。

アレハ・・・

冷や汗が頬を伝わり落ちる。
本能が、警戒した。

「あ、ベルガルド…あの、人」
尋常ならざる私の様子に気づいたのか、ベルガルドが疑惑の目線を向けた。
「あの人、魔族の…教会の…」
歯の根が合わず、がたがたと膝がだらしなく震えている。

ベルガルドは目を見開いた。
「あの女が、お前が教会で会った女だっていうのか?」
私の沈黙を肯定と受け取ったのか、彼はステージ上をきっ、と睨みつける。


ベルガルドの最初へ ベルガルド 44 ベルガルド 46 ベルガルドの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前