陽だまりの詩 2-1
コンコン
控えめにノックして病室に入る。
「兄貴…ついに学習能力というものを身につけたのね」
「ばか、これくらい普通だ」
「なに、いきなりそんなキャラにチェンジしちゃって」
「ふっ」
髪をかきあげて俺はボフッと勢いよくベッドに座る。
「…なんかあったの?」
美沙はつまらなさそうに隣に座る。
「いや、なんもないんだけど」
「はは…へえ」
「引き笑いすんな」
ガラッ
「……」
「……母さん」
入口には、久しく見る俺達の母親が立っていた。
***
「なにしにきたんだ」
「なにって…美沙の顔を見に…」
「あんたにその権利はないと言ったはずだ」
俺はどんな表情でそう言っただろうか。
怒りに震えた顔?
呆れて冷めきった顔?
「母さんは…美沙が心配で…」
俺はぐ、と拳を作る。
「今さらそんなことは言えないはずだ。帰ってくれ」
美沙は母さんが部屋に入った途端、脇を抜けて飛び出していた。
まあすぐに帰ってくるだろうが。
「……これ、少ないけど」
母さんは茶封筒を俺に差し出した。
「ふざけんな!」
瞬間的に払い落とす。
「…帰ってくれ」
「……」