秋か春か夏か冬〜17話『みんなで行こう温泉旅行・後編』〜-12
「ははははい!どうぞ!!」
「奏樹さんってシュウちゃんのことは名前で呼びますのに、わたくしのことは『須野宮さん』なんですよね」
「そそそれは…須野宮さんを、なな名前で呼ぶなど……」
「いえ…同学年ですし、わたくしのことも亜季とお呼びください♪せっかく仲良くなりましたし……ねっ?」
そう言って微笑む亜季。
ずきゅーーん!!
その笑顔のあまりの可愛らしさに、心うたれる奏樹。そしてそのおかげか、それのせいか、温泉編で出番がなかった作者の同情か……奏樹の緊張がなくなり、不思議なほど心が穏やかになる。
(…あれ?緊張がなくなったぞ?これなら…)
「わかりました。亜季と呼びます。呼ばせてください!」
「はい♪」
それから数分会話していた。亜季を目の前にした奏樹にしては奇跡である。そして亜季が尋ねる。
「そういえばまだ聞いておりませんでしたね。どういった御用件だったのですか?」
「そうでした。あの、驚かないで聞いてほしいんです。実は…前から……」
「??」
「前から…す…」
バチッ!
思いきり奏樹と亜季の目が合う。
(はっ……あれ?まままた緊張して………ど、どうしよう………)
亜季の前ではヘタレないつもの自分に戻ってしまい、焦る奏樹。
「…す??」
亜季が聞き返す。奏樹は考えた挙げ句……
「す…素敵な人だと思うんですよねぇ…恭介先輩って!」
…………………………………………。
…今ここに究極のヘタレが誕生した。
しかし自分のことは鈍い亜季、180°の方向転換にも気付かず……
「はい♪恭介様は素敵なお方です♪♪優しくて、凛々しくて…♪」
気付かないどころか、顔を赤らめて喋る亜季。その亜季をみて奏樹は嫌な予感がする。
「まま、まさか…亜季は恭介先輩のこと……す、好きなの?」
今度は『好き』という言葉が簡単に出てくる。
さっき出てくれば良いものを…。