陽だまりの詩 1-5
ぎゅっ
背中に圧力を感じた。
首を後ろに向けると、彼女が俺に抱きついていた。
「奏…ちゃん?」
「具合悪いんですか?落ち着いてください。こうしてればきっと治まりますから」
涙が出そうになった。
彼女は本当に純粋だ。
「なんでもないよ、ごめんな」
俺はゆっくりと立ち上がり、車椅子から降りてしまった彼女を再び抱えようとする。
「大丈夫ですよ、手の力だけで上がれますから」
彼女は申し訳なさそうな顔をした。
…やっぱりそうだよな。さっきもきっと自分で上がれたのだろう。
なんだか余計なことをした気分。
「でも、お願いします」
「へ?」
彼女はえへへ、と顔を赤くして笑った。
手をあげてバンザイの格好になっている。
「……」
なんだかいけないことをしている気がする。
十も離れた女の子を……
ちょっとまて。
俺は普通にロリコンじゃない。
今まで付き合った女性の中にも年下は一人もいない。
なに心配してるんだ俺は。
冷静になり、ゆっくりと彼女を抱えてあげる。
羽のように軽く、さっきのいい香りがした。
「ありがとうございました」
「…こちらこそ、心配させてごめんな」
「いえ」
彼女は胸に両手を当て、目を瞑っていた。
「…どうした?」
「男の人に抱きかかえられるなんて初めての経験で、すごくドキドキしました」
彼女は本当に純粋だ。
純粋な力は何よりも強い。
俺はそんな彼女の純粋さに、既に虜になっていたのかもしれない。