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『one's second love』
【初恋 恋愛小説】

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『one's second love〜桜便り〜』-19

エピローグ


店の扉が開いて彼が姿を見せたのは、もう全ての準備が終わる頃のことだった。
元々大した荷物もなかったし、備品は全て売り飛ばしたので私の荷造りは身軽なものだった。
がらんどうな店内に向かって、彼が声をかける。

「どうしたんです、これ?模様替えですか」

――周りをきょろきょろと見回した客、要くんだった。
「あら、久しぶり」
私が手を挙げると要くんはいつもの席について、改めて周りを眺めた。
はあ、とため息をついた。

「……言ってくれたらよかったのに」
「…………はい?」
「そんなに経営、苦しかったんですか?」
微妙に、間違っていた。私は笑う。
「違うわよ。お店を畳むのは本当だけど、納得した上での決断なの」

包装された段ボール箱の紐を、縛り直す。
力を込めた。

「決めたの。今度は私から会いに行くって。もう、後悔しないようにね」

そう言うと、要くんはきょとんとした目で私を見た。
「……変わったね、ナツコさん」
「そうかしら?」
「強くなった。いや、強さを取り戻したのかな?」

私の選択した答え。
それが正しいのかどうか、正直まだ分からない。
もしかしたら甘えなのかもしれない。
これは依存で、ただ優しい相馬君に寄りかかる。そんな自分の弱音に反論できなかった。


だから、自立しなきゃいけない。
彼の手をとって。

2人で。

「ごめんね、要くん」
作業中の手を止めて、眸を伏せる。
「君には色々迷惑かけたのに。相談に乗ってもらっておきながら、全部一人で決めちゃって……」

「それでいいんだよ、ナツコさん」
落胆する私に、彼が声をかける。
「俺を頼ってくれたのは嬉しい。けど、委ねちゃダメでしょ。そこを任せたら、ナツコさんの気持ちが嘘になるからね。
最終的に決めるのは、自分自身なんじゃないかな」


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