Not Father-1
最悪だ。
まだ胸が痛い。
あぁ、どうしよう。
もしかしたら泣いているかもしれない。あいつは泣き虫だから。
本当に、最悪。
ほんの数分前。
きっかけは些細なことだった。
「ナオってさ、お父さんみたいだよね」
この一言で、何故かは分からないが俺の胸がチクリと痛む。
「…何で?」
「だってさ、何だかんだ言っていつも助けてくれるじゃん。『頼りになるお兄ちゃん』って感じよりは、『お父さん』って感じかなーって」
「ふーん」
何となくムカついた。いや、別にサチが悪いわけじゃないんだけど。
「…何怒ってんのさ」
「別に」
サチにも俺の苛つきが伝わったようで、サチの口調まで冷たいものになる。
「嘘つき。怒ってんじゃんよ。何で怒ってんのさ」
「だから、別に怒ってないって!」
つい声を荒げてしまった。慌ててサチを見ると、サチは目を見開いて、それから 冷たい眼差しを俺に向けた。
「サチ…あの「帰って。今すぐ」
冷たい言葉。俺は返す言葉がなかった。
「…分かった」
俺はそのまま黙ってサチの部屋を出て行った。
俺が全て悪かったのだから何も文句は言えないのだが、あえて1つ言わせてもらう。
何もあんなに怒ることねえじゃねぇかよ。
そう思うとまた胸が痛んだ。何だよ、何で痛いんだよ。
小さい頃からずっと一緒にいたから、サチのことはよく分かる。
あいつは感情的に怒る方が実はそんなに怒っていない。むしろ静かに怒る方がタチが悪い。
あぁ、これからどうしようか。
とりあえず、しばらくはサチの家に立ち入り禁止だろうな、という呑気な考えが一瞬浮かんだが、すぐに振り切る。
ただ謝ったとしても、あいつはすぐには許してくれないだろう。むしろ「謝る位なら最初からしなければいいじゃん」と余計に怒りそうだ。
だからといって、このまま黙っていても前進しない。
俺はカレンダーを見る。
今日は日曜日。
ということは、明日は…