Not Father-5
「サチ、やっぱそれ俺のせいだわ。ゴメン」
「いや、別に、もういいから。あたしも悪かったとこあったろうし。ところで、じゃあナオは何でキレたの?」
「それは…」
「内緒」
「はぁ?」
『お父さん』発言でキレた、なんて恥ずかしくて言えっかよ。
「さて、そろそろ帰るか」
「えっ?じゃあ、あたしも部活に「お前も一緒に帰るんだよ。俺が送ってくから」
ぶっ倒れた奴が何を言うか。
俺は先程運んだようにサチを抱えて、自分のとサチの鞄を持ち保健室を出た。
「ちょっ、恥ずかしいんだけど」
「お前が倒れたときもこうやって運んだんだけど?」
「う゛ー…」
それっきりサチは黙り込んだためやりやすくなった。
外に出て車にサチをおろす。座らせたときに小さく「ありがと」と呟いたサチは小さな子供みたいで可愛かった。いや、今も可愛いけどさ。
「サチー」
「んー?」
「どっか行きたいんだろ?27日は無理だけど、今度の日曜日なら暇だから行くか?」
「えっ、マジで?」
「マジで」
「うん、じゃあどこ行くか考えとく」
「おー、よろしく。ところでお前何で倒れたの?」
「昨日からナオのこと気になって、ご飯食べてなかったから、貧血にでもなったのかな…?」
「…出かけたときに旨いもん食わしてやるよ」
俺はこいつの父代わりでも兄代わりでもない。
俺がなりたいのはただ1つ。
今それをこいつに言っても分からないだろうから、この気持ちはもう少し教えないでおこう。