Not Father-2
「尚先生、何やってんのー?」
「仕事に決まってんだろ。お前、俺の代わりにやってくれる?」
「やーだよっ。ところで先生聞いてよー。うちの彼氏がさー…」
職員室に入って来た女生徒の世間話に付き合ってやる。
全く、せっかくの春休みなのに何で仕事なんだよ。俺も春休み満喫してぇよ。
「…でね、先生、ケンジが…って、先生、聞いてる?」
「あぁ?おぉ、ケンジが記念日忘れてたんだろ?」
「違うよー、ケンジが忘れてたのは自分の誕生日!だからあたしがプレゼントあげてもキョトンとしてたの!」
「あぁ、そうだった?」
「もう、先生ったら人の話聞かないんだから。いつもそんな風なの?彼女に嫌われるよ?」
「安心しろ、俺はフリーだ」
「それ自慢すること?」
そいつは呆れ顔で見ていたが、『ケンジ』がそいつの名前を呼んでいたため、職員室から去って行った。
「『人の話を聞かない』か…」
そういえば、昨日も俺はちゃんとサチの話を聞いてなかった気がする。
そうだ、『お父さん』発言の前に何か言っていた。
それが何の話かは覚えてないが、サチがあんなに怒ったのはそれが関係しているんじゃないか?
机の上でそんな考えが頭に浮かんだときのことだった。
「先生!!誰かいません!?」
生徒が息を切らして入って来た。
「どうしたー?」
「あの…、大変なんです…、部活中に、突然倒れちゃって…」
「おい、落ち着いて話せ」
俺はその生徒を落ち着かせる。大分落ち着いたらしくそいつはまた話し始めた。
「あの、私吹部なんですけど、隣で吹いてた先輩が突然倒れちゃって、もう1人の先輩が『誰か先生呼んでこい』って…」
「分かった。どこでだ?」
俺はその生徒と一緒に足早に向かった。