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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈風神篇〉中編-18

「風神、貴方はこちらに来るべきだわ。」

遠くから彼女は手を差し伸べた。

「誰が!」

リュナは睨む事でそれに応える。差し出した手を胸元に引き寄せた。

「今に分かる。」

切ない声を最後にロワーヌは姿を消した。彼女が去った跡に風が舞う。しばらく沈黙が続いた。

「リュナ、怪我はないか?」

支えていたリュナの両肩から手を離しカルサは問いかけた。リュナは大丈夫と言いながら振り返る。

目に映ったカルサの姿に思わず息を飲んだ。

「カルサ、その傷!」

さっき見た時より出血が多くなっている。リュナは心配そうにカルサの様子を伺った。

「大丈夫だ。それより聞きたい事がある。」

真剣な表情はリュナの心を十分にひきつけた。

「リュナ、今の女は知り合いか?」

最初の言葉は耳を疑うような事だった。思わず聞き返してしまう。

「何を言ってるの?だって…あの人は私達を…ナルさんを!!!」

感情が高ぶり声が大きくなる。涙を堪えるため言葉につまってしまった。手で口を覆う。

「ナルを…?千羅!!」

ただならぬリュナの様子にカルサは胸騒ぎがしてならなかった。カルサの声に反応した千羅は目で応えた。

「頼む。」

切実な声、千羅は頷き姿を消した。

屋根の上にカルサとリュナの二人きり、辺りは戦火となり粉塵が舞い大気が震えていた。それがここからはよく見える。

ここはどこだ?

目の前には落ち着きを取り戻そうとしているリュナがいるだけだった。本来ならこんな事をしている場合じゃない、すぐにでも前線に立ち戦わなければ。

でも今、それよりも大切なことがある。

確かめなくてはいけないことがある。


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