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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈風神篇〉中編-11

「リュナ様、私は!」

レプリカの言葉を遮るようにリュナは足を止めた。

振り返り真っすぐな瞳でレプリカを諭す。

「レプリカ、これ以上私に言わせないで。」

全てを踏まえた上での言葉、それを言われるとレプリカは何も言えなくなってしまった。悔しさから表情が歪み、感情が高ぶって涙が出そうになる。

リュナはレプリカに近寄り、傷口に触れないように優しく抱きしめた。突然の出来事にレプリカは驚いたが、それを静かに受け入れた。

「ごめんなさい、我儘ばかり言って。でもレプリカを大切にしたいの。」

リュナの落ち着いた優しい声がレプリカの心に染みてくる。ここは戦場と化した城、それでも今二人を包む空気は暖かかった。

「お気持ちは、十分に。」

レプリカの言葉を合図に二人の体は離れた。目と目が合う。

「ライムが私に言ったの。戦い慣れてるって。」

そう言い始めたリュナの表情は少しはにかんでいた。レプリカは黙って言葉の続きを待つ。

「この国にくる前、貴方と毎日のように戦う術を学んでいた。ずっと相手をしてくれたね。」

微笑みかけるリュナに、レプリカも微笑みと頷きで応えた。

「でもここへ来てから私は一度も戦うことでカルサを助けてない。肝心な時に何もできず、怯えていただけだわ。」

辛く切ない想いが顔に出てしまう。レプリカは首を横に振り、それは間違いだと懸命に訴える事しか出来なかった。

「今こそ、私はカルサの…この国の役に立ちたいの。」

リュナの真っすぐな想いはレプリカにとって痛いくらいのものだった。そんな事、分かっている。

「お体の調子が良いからといって無茶をなさらないように。」

「ええ。」

「術を知っていても経験がある訳では有りません。うぬぼれてはいけませんよ?」

「分かった。」

レプリカの言葉を素直に受けとめる。伝わった、それを返してくれた。リュナにはそれが分かっていた。

「ご武運を、お祈り致します。」

そう言うと、レプリカは深々と頭を下げた。リュナは微笑み、彼女の肩に手をのせ、レプリカの頭に軽く口付けた。

ゆっくりと離れていく。

「ありがとう、リュナ。」

その瞬間、世界に音はリュナの声しか存在しなかった。


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