『鵺』-14
「…はああぁぁっ!!ああぁぁ!」
狂ったように悶える理沙。
「…なかなか…いい具合だ…」
激しく腰をグラインドさせるガマル。
女の叫びと男のうめき声。それにお互いが発する淫猥な匂い。
地獄のような光景を目の前にしながらも、伸治は嘲るような目で薄笑いを浮かべるのだった。
貨物船ターミナル。
伸治とガマルは〈サンタマリア号〉の前で握手を交していた。
「1週間後に入金予定だ。その際は連絡する」
ガマルは声のトーンを落として言った。
「ああ。よろしくな」
「ところで、〈アレ〉はどうするんだ?」
ガマルの問いかけに伸治は静かな口調で答える。
「航海中は女っ気が無いから寂しいだろう。適当に使ったら……」
「分かってるよ。シンジ。魚の餌にでもするよ」
獰猛な輝きを帯るガマルの目。
伸治は踵を返しメルセデスに乗り込むと、Uターンをして帰って行った。
バックミラーに映る〈サンタマリア号〉は小さくなり、やがて見えなくなった。
外灯が伸治の顔を照らす。その表情は険しいモノだった。
ー月曜日ー
休み明けの学校。
朝から脱力した表情が教室に並んでいる。
そんな中、担任の教師が顔色を変えて飛び込んで来た。
彼は蒼白の顔で言った。
「実は野澤理沙の親御さんから連絡が有り、彼女が土曜日に出掛けてから家に帰って無いそうだ。
警察にも捜索願いを出したらしい。誰か知っていたら教えてやってくれ…」
担任の言葉に反応して、生徒達はあれやこれやと自論を言い放つ。
誘拐だ自殺だと無責任な言葉が飛び交う。
そんな喧騒をよそに伸治は静かに座っていた。
その美しい顔は無表情だった。
…『鵺』完…