『晴れ時々曇り、のち雨』-3
『ハクウン〜Red devil and Blue angel〜』
天には雲がうっすらと青空を包み、大地には草々が芽吹き、風によって揺られている。途中風が二人の人物によって遮られ、草々の動きがやみ、再びまた揺られる。
一人は、不気味なほど真っ赤なマントをなびかせ、元は黒と白のストライプである軍服はマント同様紅く染まりきっていた。かつては銀色の刀身だっただろう──現在は真っ赤になってしまった──刀の柄(つか)を持ち、緑の長髪はさきの風によりなにかの答えを模索するように動き回っている。
もう一人は、蒼く澄みきったセレスタイトのペンダントを身につけ、両手で槍を構えていた。この人物も黒と白のストライプの軍服を着ているが、何色にも染まっていない。茶色の短髪は風と一体化し、何かを待っているようにただ揺れていた。
そして、二人の周りには観客(ギャラリー)が自然と集まりはじめた。
「あれから七年も経つんですね。あなた随分変わってしまったようですね?」
槍を持つ人物は真っ赤なマントの人物に話し掛ける。いや、話し掛けるという優しいものではないだろう。殺気と殺気がぶつかり合い、空気が固体化してしまったように感じてしまうのだから……。
「確かに、オレは変わったさ。七年前のあの日、自然の摂理を知ってしまったんだ。人が人を殺す、摂理を……」
「それを知って、あなたは人を殺し続けたのですか? 『紅き悪魔』と蔑まれるまで……」
「ふん。そいつはお互い様だ。 あんたも『蒼き天使』とよばれているんだろう? 『天使』と言っても忌み嫌われているがなあ!」
「私は人を殺していませんよ。あなたよりは罪深くない。それに、私は怪物を殺しているんです。人々のために……」
「偽善者だな、あんたも。七年前とはだいぶ変わっちまったな」
「ええ、確かに私も変わりましたし、偽善者かも知れません。ですが、人々の為に怪物を殺して、その結果人々が平和に暮らしている。それも事実です」
「そんなことを思ってるのは、あんただけだぜ?」
「さて、それはどうでしょうか? ミスティン。いやしかし、会話にも疲れましたね。そろそろ決着をつけますかッ!」
「そうだな。七年前の決着にケリをつけるとするかッ! ブルー=クレイツ!」
「過去は極力引き摺りたくはないのですが……。あれは、引き摺らなくてはいけないことです。行きますよッ! ミスティン=レッシー!」
槍を持った男――ブルー=クレイツ。別名『蒼き天使』。対するは、赤い刀の男――ミスティン=レッシー。別名『紅き悪魔』。
かつて旧友だった二人は、こうしてあいまみえている。そして、今――いや、ずっと前から見えない絆を断ち切り、戦いの名を借りた殺し合いをしようとしてきた。
だが、止めることは、許されない。
留めることは、許されない。
この先に何が待ち受けるのか。
それは誰にもわからない。
時には希望が待っているのかもしれない。
時には絶望が待っているのかもしれない。
それでも戦わなくてはならない。
END