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無味乾燥
【ショートショート その他小説】

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『晴れ時々曇り、のち雨』-2

『ハレ〜planetarium and starlight〜』

小さなアパートの一室。部屋は暗くなり、天井にはキラキラと小さな星々が煌めいていた。大きな光ではない。今にも消えそうな儚い光だ。

テーブルの上に手作りのプラネタリウム。手作り故にほのかな光になる。久しぶり──約十二、三年ぶりに作ってみたが、作り方は忘れてはいなかった。寧ろ鮮明に覚えていた。


小学生の頃の夏休み。自由研究で手作りプラネタリウムを作らされた。いつも忙しかった父親がいきなり『プラネタリウムを作るぞ!』と言いだしたのだ。なんでも、知り合いに作り方と材料を貰ってきたので、作ってみたかったらしい。

いくら失敗しただろうか。何度も繰り返し、何度も成功を祈った。夏休みの最終日にようやく完成し、照らしてみた。当時は語彙が少なかったので、感想が言えなかったのだが、今にして思えば、あれが心が暖かくなる瞬間だと思う。

出来上がった瞬間に、父親が『大事にしろよ』と言った。あの父親にしては珍しく優しく、そして、思い切り感情の入った言葉だったことを今でも覚えている。


あれから時間がだいぶ経った。去年の今日父親が死んだ。皮肉なことに、初めてプラネタリウムを作った日と一緒だった。

去年は家に帰り通夜や葬式を手伝ったが、どうも今年は帰れそうもない。だから、こうしてプラネタリウムを作り、ただ感傷に浸っていた。

あの日からたった一言を言いたかった。あの時は恥ずかしくて言えなかった。親父が死んだあの時も、心のどこかに気恥ずかしさが残って言えなかった。

だけど、今ならこの言葉を、この口で紡ぐことが出来る。

この気持ちを、この口で言うことが出来る。

『ありがとう、親父』

END


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