青い春-3
「別に…何もないよ」
「そうかぁ?ならいいけど」
コーヒーを飲み終えたナオはそれをゴミ箱に投げ捨て、またお金を自販機に入れる。
ガタンッ
自販機から落ちてきたそれを拾い、私の手のひらにそれを握らせる。温かい。
「だったら早く帰れよー。もう暗いんだからな」
握らされたそれを見る。ココア。小さい頃から大好きな飲み物。
「ナオ!」
さっきもコレ飲んだからいらない。
そう言おうとしたけど声が出ない。その代わりに出てきたのは涙だった。
ナオは一瞬ぎょっとした表情を見せたが、優しく微笑んで私を見つめる。
「何だ?何か言いたいことあるんだろ?」
私は溢れた涙を拭ってナオを見上げる。ナオは相変わらず微笑んだまま何も言わない。
「あたし、再来週誕生日なの」
「うん、知ってる」
「でも、あたしの誕生日を祝ってくれるのはこの学校には2人しかいないの」
「うん」
「誕生日はあたしが生まれたことを祝福する日なんでしょ?でも、ナオとカナちゃん以外はあたしが生まれたことを喜んではいない」
「…」
「あたし、望まれて生まれてきたの?あたしが生まれて最初に喜んだお父さんだって、あたしを置いていなくなっちゃった。あたしの居場所って、生まれた意味って、この学校に…あるの?」
ナオの微笑みはいつの間にかなくなってて、真剣な顔つきになっていた。
しばらくの沈黙。
あぁ、またココアが冷えてしまう。
「…お前、それ本気で言ってる?」
「…うん」
「…ぶっ、ははっ、はははっ」
ナオは突然吹き出した。
私は少しムッとする。