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ベルガルド
【ファンタジー その他小説】

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ベルガルド〜治癒の儀式〜-2




トゥーラが川に落とされる少し前―

セシルを背負った僕は近くの町に到着した。
馬車から歩いて1時間程で着くその町も、やはり静寂に包まれ活気が無いように感じられる。
空は既に薄暗く、夜の帳が下りて来ようとしていた。

僕はカイ。
魔族の王であるベルの従者、というのが僕の立場だ。
ただし、彼とは幼馴染ということもあり、親友のような兄弟のような、かなり近しい関係であることは間違いない。

「大丈夫かなぁ、トゥーラ様…」
セシルは心配そうに後ろを振り返る。僕もベルガルドのことは心配ではあったけど、今は彼女を安心させたいと思った。

「大丈夫だよ。特に危険なことも無いだろうし、何かあったとしてもベルがいるから大丈夫。」

普段ベルガルドと一緒にいるときとは違い、落ち着いていていることを自分でも感じる。
なぜだろう、守るヒトがいるからだろうか。
背負っているセシルの温もりを感じた。

「セシルちゃん軽いけど、そんなに痩せてて大丈夫なの?」
「そうかなぁ?でもご飯たくさん食べてるから大丈夫!!」
セシルは怪我していない方の足をバタバタさせて、あっけらかんとして答える。

「護衛団長なんて大変でしょ?そんな華奢な体で。」
「全然大変じゃないよ〜。だってトゥーラ様を守れるんだもの!それに、アーレンに来る前までの方がもっと大変だったから。」

こんなまだ成人も迎えていない、壊れそうな女の子が、どうしてこんな危ない仕事をしているのか?
どうして護衛団長になることができるのか?

気になることは山ほどある。
ただ、普段どおりに元気な声をしてはいるけれど、触れてはいけないことに触れたような、そんな気もする。

「カイ様も守るモノがあると強くなれるタイプなのね。」
「え?」
「あたしもそうなの。だから…トゥーラ様を守れない自分なんて大っ嫌い!!今、足手まといにしかならない自分が…許せないのよ…。」
「…っ!そんなこと…っ」

その時ちょうど、1人の町人が歩いてきた。
他のヒトとは違い、丸太を背中に背負い、真っ直ぐに前を向いて地を踏みしめている中年の男。
その姿は働く男といった感じで、僕は好感を持てた。

「すみませんが、この町にどなたか医師はいらっしゃいませんか?」
僕はかなり丁寧な口調でその中年男に尋ねた。
しかし、その男はすぐには答えず、僕とセシルを下から上まで繁々と眺めて不思議そうな顔をした。

「お前さん達、どこのモンだ?この国じゃあるめぇ。」
「え?あ、はい。アーレン国から来ましたが、なぜわかるんですか?」
「なぜっつったって、見りゃあわかんべ。ぱっと見でこの国の奴らとは違うだろうが。」
僕は辺りを見回した。
確かに。ちらほらとヒトはいるが、目に生気が感じられない。

「おまえさん達医者がどうとか言ったが、やめておいた方がいいと思うど?」
「え?」
「たぶんここらの連中と同じく、医者も仕事してないと思うでなぁ。」
そう言うと中年男は近くに見える青い屋根の家を指差した。

「あそこが町医者の家だで、行っでみるといい。」
男はそう言い残し、ロッジのような、木で作られた小さな家の中へと入っていく。
僕とセシルはその様子を見届けると、教えられた家に向かい、その扉を叩いた。


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