Believe Me!-1
俺の幼なじみはすぐに人を信じる。
クラスの奴に「用事があるから」と雑務を押しつけられても、それが嘘とも思わずに引き受けてしまう。
ほら、また。
「河合さん、お願い!!」
「あー…、でも…」
「他の人も忙しいみたいで、河合さんにしか頼めないのよ」
じゃあお前はこいつが暇だとでも言うのか。
声に出しそうになるのを堪える。
「それに、河合さんその腕じゃ部活出る必要ないでしょ」
「おい…」
思わず声を出しそうになる。しかし、俺が声を出すその前にあいつは彼女の頼みを引き受けた。
全く…。
馬鹿な女。
クラス全員分のノートを片腕で運べるわけないのに。
「なーにやってんだよ」
女がいなくなった後、サチのもとへと足を運ぶ。
机に積まれているノートの山を見つめていたサチは俺の方を向いて情けなく笑った。
「見てた…?」
「おぅ」
「…あたし、馬鹿だよね。できもしないことを引き受けちゃって。申し訳ないよ…」
「確かに馬鹿だな。あんなの嘘に決まってんだろ」
「それはないよ。本当に急な用事ができたって言ってたもん」
…ダメだこりゃ。
俺は机にあるノートの山を抱えた。
それを見てサチの大きな瞳はさらに大きくなる。
「いいよ、自分で運ぶから。何回も分けて運べば大丈夫だって」
「いーよ、運ぶから。それに俺も職員室行かなきゃだし」
そう言うとサチは大人しくなった。
こうしているとサチは美人の部類に入ると思う。いや、美人だ。
吹奏楽部のためあまり日光に当たらない肌は白く、ショートカットの髪が顔の小ささを際立たせている。低めの身長に大きな瞳と真っ黒な髪、そしてぽってりとした紅い唇。白雪姫のようだ。
ただ、性格はバカ正直なのか純粋なのか、人を疑うということを知らない。
そして口が悪い。その上に正義感と責任感の強さが災いしてさらに悪化している。