Believe Me!-3
全く…。
本当に馬鹿な女だ。
「…おい、サチ。お前は確かに何も間違っちゃいねーよ。でもな、佐伯も俺も、そうやって正しいお前に敵ができるのが心配なんだ。理解者が少ししかいないから、そいつらがいないときはお前が傷付くことになる。それにさっきも言った通り、俺は全く気にしてないから、お前ももう泣くな。これ以上泣くなら俺も泣くぞ」
そう言いながらサチの頭を撫でるが、泣き止んだサチの右手で払われた。
「子供扱いしないで。それにナオが泣いちゃったらあたしが苛めたみたいになっちゃう」
「はいはい」
まだ目は真っ赤だったが、それでも俺に笑顔を見せようとするサチを見て、俺は無意識にサチの腕を自分の方へと引き寄せ…。
「ちょっ…、ナオ、子供扱いすんなって言ったじゃん」
「子供扱いじゃねぇ…」
「えっ?じゃあ何…」
キーンコーンカーンコーン…
突然のチャイムの音で正気に戻った俺は慌てて抱き締めていた腕をサチから離す。
サチはよく分からないといった表情だ。
「ナオ…?」
「い、いや、今のはただ、慰めようかと思って、つか、もう部活も終わりじゃねぇか?桜井迎えに行くだろ?」
「あっ、本当だ!カナちゃんのとこ行かなきゃ!!」
慌てて荷物を持って走り出すサチ。
かと思えば俺の方を向く。
「ナオ、今日は本当にありがとね!少し元気出た。でも、セクハラはやめてね」
そう言い残し、廊下を駆けていった。
1人残された俺はそばにあった机に座り込む。
「…何やってんだ、俺。あいつに抱きついたりして…」
あいつに対する、妹としての気持ちでもない、友人としての気持ちでもない、あいつを抱き締めたときのあの気持ちの名前を、俺はまだ知らない。