Believe Me!-2
顔の良さで女子からは妬まれ、口の悪さで反感を買う。
おかげで高校生活の中でできた友達は1人しかいない。いや2人か。俺を入れると。
その友達が部活に行っている今、サチに味方はいなくって。
だったら、俺が助けてやるしかねーだろ?
ノートを持って職員室に向かう。いいと言ったのにサチは俺のあとをついて来る。
「大丈夫だって。ちゃんと先生に渡しとくから」
「いや、そうじゃなくって。仮にもあたしの仕事なんだから最後まで付き合わなきゃ」
「左様でございますか」
深いため息をつくとサチは少し不機嫌な顔をした。
「失礼しまーす」
サチと一緒に職員室に入る。ノートを英語の佐伯先生の机の上に置くと、佐伯がじろりと俺とサチを見た。
「山本先生、何ですか、これは」
「何って…。先生が出した課題ですよ」
「じゃなくって。河合、お前山本先生に運ぶよう頼んだのか」
「はい」
「ったく…。普通先生にノートを運ばせるか?俺は別に気にしないけどな、他の先生方は良くは思われないぞ」
「はぁ」
「ただでさえお前は他の先生方からの評判が良くないんだから、『見た目』ってものを気をつけろよ」
「でも「分かりました。すいません、俺も不注意でした」
サチが何か言いかける前に言葉を遮って佐伯に謝った。
サチは何か納得のいかないような顔をしているが。
「お前さぁ、そうやっていちいち口答えしようとするから他の奴らに目つけられるんだよ」
職員室を出て教室にサチの荷物をとりに行く途中、ため息をついて言う。
「だって、あたし別に他の先生にどう思われても気にしないもん。しかもナオまで言われちゃったし」
「そういう問題じゃなくって…」
サチの顔を見てぎょっとした。今にも泣きそうな顔をしている。
「サチ…」
「ナオは、ただあたしの手伝いをしてくれただけじゃん。あたしが無理なお願いを引き受けたから、こんなことになっちゃった訳だし…」
そこまで言ってサチは俯いた。床に水滴が落ちる。
分かってる。こいつはただ不器用なだけだ。
人を利用することを知らず、人の言葉をかわすことも知らず、この表面上の付き合いの上に成り立つ社会で苦しんでる。
全ての人を信じ、自分よりも人の損得を考えて行動するから、結局いつも損するのは自分。