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捨て猫
【コメディ 恋愛小説】

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捨て猫-2

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
思わず情けない声を上げてしまう。
だって、人がいたのだ。
Tシャツだけを身に着けた女の子が、うつ伏せで。
それだけならまだいい、その子には、その子には……
「猫耳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
俺は生まれてこの方、猫耳の生えた人間など見たことが無い。
そういう特殊な者を好む、人間がいる事は知っていたが、それは次元の違う話だ。
ここは、三次元、二次元じゃない!なのに何で?何で?
「うっさいわねぇ。耳が生えてて悪かったわね」
土管からのそりと、ソレが姿を現す。
長い漆黒の黒髪が、雨に濡れ、妖艶さが際立たされている。
白い一枚のTシャツは、雨によってピッタリと体にへばり付き、その体をすべて透か
してみしていた。
そこそこ豊かな乳房も、そのピンク色の頂も、そして、下半身の陰りもうっすらと。
だが、本人はそんなの意に返さない様子で、堂々と突っ立っている。
そしてその少し幼さを残したような整った顔には、猫のような……
「猫耳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「しつこいわねっ!」
ゴッと、蹴りが屈んでいた俺の顔面にヒットする。
その際に見た、足の付け根のサンクチュアリを俺は忘れない。
大人のそれの一歩手前の、少しばかり薄い毛、それと白い太ももの成すコントラス
ト。
それはどんな芸術作品にも勝るとも劣らなかった。
女の裸は、生ける芸術。昔の偉人は素晴らしいことを言う。
「ねえ、あんた」
あんたとは俺の事なのだろう。
「ええと、何?」
「今日から、あんたの家に世話になるわ」
一瞬思考が止まる。たった今あったばかりの女の子と、同棲?しかも、あっちから話
を持ちかけてくるだなんて。
それだけじゃない、彼女には、猫耳が生えている。
現実と信じろという方が、難しい。
「ねえ、どうして君には耳が生えてるの?」
「猫だからよ」
あ、そうか。猫だからか、はははぁ。
そうだ、猫だから猫耳が生えている、至極当然のことではないか。
俺は確信した。この質問は無駄だ、と。
「ねえ、それより風邪を引いてしまうわ。早くあんたの家に連れて行ってよ」
彼女は、まるで俺のことを召使いであるかように言った。
仮にも居候になる身分で。

猫耳娘を傘の中に招き入れ、彼女の陶器のように白く小綺麗な顔に見とれながら、俺
はふと現実に戻った。
頼まれたからこれから同棲。
いくら雨の日だからと言っても、現代日本の倫理観からしておかしい。
おそらく、はいそうですか、と易々と泊めようなんて、後で手を出す来満々の犯罪者
予備軍くらいじゃないだろうか。
猫耳娘へと視線を移す。
立ち止まってる俺の顔を不機嫌そうに睨み返す顔に悪意も、一抹の疑問や、申し訳な
さも感じない。
それを見て、その質問やら、それに付随するすべての会話は無駄になるだろうことを
悟った。
「いつまで立ち止まっているのよ。早く歩きなさいよ」
「はいはい」
泊めるとは言っても、尻に敷かれるのは少しいやだった。


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