コトノハ-1
あのさ、君に言っておきたい言葉があるんだ。何も言わずに聞いて欲しい。 あいつが死んだとき、君は僕に言ったよね? 『何もかも忘れたい、記憶を消してしまいたい…』 そう言ったよね? 確かに君は苦しんだと思う。 辛い思いをしたと思う。 でもね、それは間違ってるよ。 死んだら人は、人の思い出の中でしか生きられない。 どんなにすごいことをした人だって、死んでしまったら思い出の中でしか生きられないんだ。 もし君が、あいつのことを忘れてしまったらあいつはどうなる? 世
界中の誰よりも、大切に思って、愛していた君に忘れられたら…あいつは本当に死んでしまう。 忘れられたら、あいつの存在自体、否定されてしまうんだよ? 一番愛した君が覚えてなくて、誰が覚えてるの? あいつのこと、忘れないでいてやって。 あいつが生きた証を、君が証明してやってよ。 これは、君にしか出来ないことなんだ。 だから、 忘れたいなんて、もう言わないで。