遅雪-5
「私も…、愛してる」
小さな声で彼に愛の言葉を囁くと、彼は私の後ろに腕をまわしてきて、私達は抱き合った格好になった。
「何だかクリスマスみたいだね」
「そうだな。遅かったけど」
そう言って2人で笑った後、彼がより強く抱き締めてきた。
「結婚なんてするな。俺のそばにいろ」
「うん」
「俺から離れないでくれ」
「うん」
「それと…、愛してる」
「うん」
私達はただずっと、抱き合いながら互いに愛を囁き合った。
その後、2人で男に頭を下げて婚約を白紙にしてもらうように頼んだ。
男は本当にいい人で、快く了承してくれた。
彼もまた、幸せになってもらいたいと真剣に思ったのは私も義父も同じだった。
「これからいきなり結婚はアレだから、のんびりいきますか」
「結婚資金も貯めなきゃだし…。まぁ、あたしは式なんてしなくてもいいけど」
「嫌だ。俺がやだ。お前の花嫁姿見たいし」
「はいはい。じゃあ働いてお金稼ごうね」
「お前は無理しなくていいからな。これから子供だって欲しいし」
「まだ早すぎだから」
これからもこんな風にいたい。
ずっとそばにいて、毎日を幸せに生きてゆく。
そしていつか生まれてくるであろう子供に話そう。
雪は幸せを運んでくることを。