遅雪-2
私の母は貧しい家に生まれたため、わずか10歳で大人達と一緒に働き始め、15歳で私を生んだ。それくらいこの国は乱れているのだ。
私を生んだ後は家族と自分に加え、私の分も稼がなくてはならなくなり、相当大変な思いをしたらしい。
義父は教員をしているため、少しは経済的余裕があるが、それでも決して裕福なわけではない。
だから私も内職やバイトをして自分の生活費だけでも稼いでいる。
けれど、「父」といっても義理で、母がいない今は他人である訳だし、何より義父である彼を愛してしまった私は、これ以上彼に迷惑をかけたくなかった。
だから。
「ねぇ、じゃぁ今年の12月25日は雪降ると思う?」
閉じた本に向けていた目を義父に向ける。義父は少し困った顔をした。
「そうだな、降るかもしれないし、降らないかもしれない」
「じゃあ結局は分からないってことじゃん」
「まぁな」
困ったように笑う彼を見て私は言った。
「お義父さん」
「ん?」
「12月25日に雪が降らなかったら話したいことがあるの」
これは1つの賭け。
私がこのまま義父と一緒にいるべきか、そうでないかの。
──12月25日。
その日の天気は…晴れ。
私は賭けに負けた。
「お義父さん」
負けた私は彼から離れなければいけない。
「あたし、」
それは彼を愛してるからこそ。彼を愛しているから、私は彼を守るために、
「結婚するから」
彼のもとを去る。