若草ポルカ-2
「ったく、置いてきちまったか?」
「ちょっと!こんな所で煙草吸わないで!」
急に後ろから声が聞こえてきたために、思わず口から煙草を落としてしまった。火が点いてなくて良かった。
俺は声のした方を見る。そこには女が立っていた。
「あんだよ、別にいいだろ煙草くらい」
「あら、あんた若そうね。ひょっとして未成年?」
「だったら何だよ」
「じゃあ余計に駄目に決まってるじゃない!」
女はそのまま俺に近付いてきて、隣に腰掛けた。
「せっかく花のいい匂いがするんだから、煙草なんて吸われちゃ空気が汚れるわ」
「ははっ、違ぇねぇ」
「そう思ってんなら初めからするな。…ねぇ、あんた名前は?ここで会ったのも何かの縁よ」
「…百瀬仁」
「へー。『桃』なんて春っぽいじゃない。あたしは若葉。よろしく、仁」
それから俺達はただ黙って公園の景色を眺めた。公園には俺達以外誰も来なくて、小鳥のさえずりや草木のざわめきしか聞こえない。
そんな光景を見ていると、ふと、胸がざわざわしてきた。
嬉しくて、でも切なくて、心が弾むような感じ。
あぁ、そうだ。
「やっぱり春だな」
「えっ?」
俺の呟きに若葉は当たり前だと言うかのようにこちらを見た。
違うんだ。季節の春が来たとか、そういう意味じゃなくて。
「あぁ、俺おかしいかもしんない」
「うん?」
「変だよな、俺。会ったばかりのあんたに惚れたみたいだ」
若葉はやはり驚いたような表情を見せた。
無理もない。俺自身も驚いてるんだから。
しかし、若葉は微笑みながらこう言った。