ヒトナツF-1
残りの一週間、俺は渚をいろいろな場所に連れまわし、できるだけ二人の時間を作った。
二人の思い出を少しでも増やすため。
迷いを断ち切るため。
最終話
ヒトナツ
もちろん、まだ桜が好きなんじゃあない。
それは事実だ。
俺はヘタレだから。
ただ、桜が可哀想だと、そう思った。
可哀想なのは振られた俺だろう。
なんて思ったりするけど。
もう理由はわかっていた。
桜のやつ、初めてできた友達の渚に、俺を譲ったんだ。
桜は友達を大切にしたいから。
俺のことが好きだった渚に。
たった一人の友達に…俺を譲ったんだ…
でも、桜はまたひとりになってしまった。
桜は孤独だ。
それは、俺だけが知っている、桜の心の闇。
それを知って放っておけるか。
でも俺は、渚が帰った後、桜を支えてやるなんてできない。
結局、俺は何を望んでいる?
わからない。
結論なんて出ない。
目の前のことしか見れない。
ただ俺は明日、渚を空港で見送ることしかできない。
そんなちっぽけなヘタレだった。