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赤い靴
【青春 恋愛小説】

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しあわせ-2

「途中のスーパーで色々買ってきた。すぐに作ってやるから待ってろ」

「別にカップ麺で良かったのに」

「馬ッ鹿、お前、骨折れてんだからちゃんと栄養とんなきゃ駄目だろ」

ナオは呆れた顔をして黒い鞄を居間のテーブルの上に置いた。

「ナオ、仕事は?」

「まだ少し残ってる」

「えっ、それ終わらせなきゃいけないんじゃないの!?」

「明日までには終わらせないとな」

「だったら「でも、それはお前にやってもらうから。俺がメシ作ってる間にやっといて」

「…私がやんの?」

「お前のために時間割くんだから、そんくらいしてもらわないとな。大丈夫、パソコンに入ってる文書印刷するだけだから」

そう言ってナオは上着を脱いだ。袖をまくり台所へ向かう。上着は脱いだままの状態で床に放置してあったため、椅子の上に置いてやった。
黒い鞄からフロッピーを取り出し、家のパソコンに繋げる。起動させて[印刷]をクリック。

部屋の向こうからは鍋のフタが動く音。

もし私がナオにこの仕事を頼まれなければ、私はナオの顔をまともに見れなかっただろう。
自分のせいで周りに迷惑をかけるということが嫌いな私のことを思って、彼は私に[居場所]を作ってくれたのだ。



印刷が全て終わり、書類の山を少しずつ机の上に運ぶ。

「ナオー、印刷終わったー」

「おー、お疲れさん。こっちももうすぐできるから食器広げてくれ」



台所に行くが、そこで思わず吹き出してしまった。それに気付いたナオがじろりとこちらを見る。

「何か問題でも?」

「いや…、よく似合ってるよ」

何せナオの格好は、Yシャツの上に母のピンク色のエプロンを羽織っているものだったのだ。
高校時代に柔道部だったナオはがっちりとした体型なため、どうにもピンクが合っていない。

「ほっとけ。どうせ『似合ってない』とか言うつもりなんだろ。それよりほら、できたぞ」

盛り付けられた皿を居間に運んで座る。
最後にナオがエプロンを脱いでやって来た。
「さて食うか」

2人でいただきますをして食べ始める。

「…美味い」

「当たり前だろ。ずっと1人暮らしなんだから」

「あ…」



ナオが20歳のとき両親が突然の事故で亡くなった。当時ナオは地方の大学へ行っていたため、両親の最期を看取ることができなかった。
ナオは今でもそれを悔やんでいる。


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