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ヒトナツ
【コメディ 恋愛小説】

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ヒトナツE-2

***

んあ、寝てたみたいだ。

寝汗はかいていないし、もううるさい蝉の音も聞こえなくなった。

もう夏が終わる。


ふらふらしながら階段を下りると、渚が玄関にいた。

「……」
「あら、おはよ」
「どっか行ってたんか?」
「桜と出かけてた」
「は!?」
「だめなの?友達なのに」
「てめえ!俺らが別れたら急にまた遊ぶようになりやがって!お前ら二人で俺のことハメたのかよ!?」
そうとしか思えず、すごい剣幕で怒鳴ってしまった。
渚も目を丸くしている。
「……悪い」

完全に自暴自棄になってる。
もうなにも考えたくない。

俺は頭をかきながら渚の横をすれ違った。
「……」


***

「荒れてたわよー健吾のやつ」
「……」
「本当にいいの?桜」
「……こうすれば、渚さんが戻ってくる理由になるから」
「あのね、あたしだっていちおう大学生なんだから。休みじゃないと戻ってこないわよ」
「でも健吾さんに会いたくてすぐに戻ってきますから」
「……桜、相変わらず黒いわね」
「ふふ…あ、渚さん、いつアメリカに帰るんですか?」
「ん……来週くらいかな?」
「ら…そんなに急に!?」
「言ってなかっただけよ。もともと来週までだったの」
「……そうですか」


電話を終えると、健吾の部屋へ向かう。
「……これがラストチャンスだから」
意気込んでドアノブを回した。

「健吾」
「あ?」
「まだふてくされてるの?」
「……」
健吾は無言で寝返りをうった。
「あたしね、来週アメリカに帰るの」
「はあ!?」
ガバッと起き上がる健吾。
よかった。これで無視されたらちょっと苦しかったわ。
「……だから」
「……なんだよ」
「健ちゃん……あたし、健ちゃんが好きなの」
「……」
途端に顔を赤くする健吾。
可愛いし嬉しい。
「あたしと付き合って。桜は忘れて」
「……い、いいのかよ、友達なんだろ」
「もちろん桜は大切な友達だけど、あたしは健ちゃんに会いに帰ってきたんだから」
「……」
「お願い健ちゃん、あたしを好きになって」
「……」


数分の沈黙の後、健ちゃんは小さく頷いた。

その間、なにを考えていたのかはわからない。


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