秋と春か夏か冬〜16話『みんなでお泊まり温泉旅行・前編』〜-8
「風邪ひくぞ」
「えッ!…ぁ…恭介くん………」
俺も香織の横に座る。
「ボーッっとしてたな。考え事か?」
「なんか……夢みたいだなぁって……あのね、わたし…恭介くんと友達になるまで…友達できなくて……旅行なんて家族と行くくらいだったの……。だから…最近は毎日がすごく楽しくて…全部…恭介くんのおかげ…。だから……ありがとう…」
喋るのが苦手な香織。でも一生懸命に言いたいことを伝える。初めは全然喋れなかったのに…本当に成長したと思う。
「香織…確かに俺は最初の友達だ。でも…決して俺のおかげじゃない。
俺が友達になったのも…理緒や鈴も……みんながみんな、お前の魅力に惹かれたんだ。もっと自信もて」
「でも……恭介くんが…いなかったら……」
「言ったろ?たまたま俺が最初だっただけ。きっかけに過ぎないさ…。いま知り合ってる連中なら、みんな本当のお前をわかってくれたさ」
するとめずらしく香織が大きいをあげる(大きいと言ってもそれでやっと普通のボリュームくらいなのだが)
「でも!もしそうだとしても……わたしは…………恭介くんが最初だったから!ううん…たとえ…最初のお友達じゃなくても……わたしは…」
…そして…
「恭介くんが『お〜い!メシだぞー!2人とも早く来いってば〜』
……ロン毛の登場。
『ベスト・オブ・空気読めない』の称号をロン毛は手に入れた。
「あぁ、いま行く。香織、最後なんて言ったか聞こえなかったけど、続きはまた今度な」
そう言って恭介は拓也と一緒に部屋へむかった。
………カァ。
勢いに任せてか…それとも本心か…とんでもないことを言おうとしてたことに気付き、1人残された香織はこれ以上ないくらい顔を真っ赤にする。はたして後に続く言葉は一体なんだったのだろうか…。
ブンブン!
頭を振り、香織も部屋へ行こうとする…が、杏子が腕を組み、壁に寄りかかりながらタバコを吸いニヤニヤしていた。
「せ、先生!いつからそこに…み、見てました?」
「内容は聞こえていないから安心しろ。でも香織……青春してるのぉ♪若い若い♪♪」
ぷすぷす………ボン!
顔の赤さが限界を超え、香織はショートした…。
この日の夕食…いつも以上に香織は無口だったとか。
1日目・終わり