秋と春か夏か冬〜16話『みんなでお泊まり温泉旅行・前編』〜-3
「もしかして…シュウが作ったのか?」
「〜〜…あぁそうだ!悪いか!アキが手伝ってって言うから…し、仕方なく作ったんだ」
何ギレかわからないが、怒り狂っている愁。そしてやれやれ、と言った顔をして亜季が口を挟んだ。
「恭介様…シュウちゃんは普段は料理なんかやらないのに、今日は自分から作りたいって言ってきたんです♪誰かさんに食べてもらいみたいで…」
「ち、ちがぁーう!!断じて言ってない!これは…その……そうだ、自分のために作ったの!返せ!俺が全部食べるんだ!」
そう言って取り上げようするが、恭介は簡単に避けてオニギリ(?)を1つ食べた。
「ぁっ…」
もぐもぐ……ごくん。
「うん…おいしいよ。形は明らかに変だけど……腹に入ればどれも一緒だ。初めてでこれなら、おまえ料理の才能あるかもな」
「…ほ、ホントに?」
「あぁ。自分で食べるために作ったやつらしいけど……俺はまだまだ腹が減っててな、もう少し食べちゃダメか?」
恭介が聞くと視線に困った愁は肘をつき、窓の外を向いてしまう。そして小さい声でボソボソっと呟いた。
「ぅ…しょぅがなぃな、俺のぶんも食べて良いぞ。そ、そのかわり……の、残さず…全部だからな」
「あぁ」
そっぽを向いていたため恭介は知らないが、愁の顔は少しだけ赤く染まっていた。
「くすくす♪」
そして恭介と愁のやりとりを微笑みながら見ている亜季だった。
「ごちそうさん。ふぅ〜満腹満腹」
弁当を全部食べ終えると、亜季が聞いてくる。
「恭介様♪どちらの方がおいしかったですか?」
……。
「いや、両方とも同じくらい…」
「お選びになるとしたら?」
…………。
普段は聖母のような亜季の優しい笑顔。だが今はその笑顔がなぜか怖い。
「………」
沈黙……。そして恭介が選んだ答えは…