秋と春か夏か冬〜16話『みんなでお泊まり温泉旅行・前編』〜-2
――1日目・昼――
今の状況を確認し終わる。
どうやら今は列車の中。
温泉地へむかっているようだ。ご丁寧にも、俺の荷物はちゃんと積み込まれていた…。そして座席は4人席なので横に夏輝、正面に香織と拓也がいる。
しかし、よくもまぁ起きなかったもんだ…。杏子のことだから一服盛ったんじゃないのか?まぁ考えれば考えるほど恐ろしいからやめておこう…。
俺はとりあえずトイレに行くことにした。
そして戻ってくる途中…
(ぐぅーー…)
腹の虫が鳴る。そういえば起きてからなにも食べていない…。
そう思ってお腹をさすっていると、向こうで亜季が手招きして呼んでいる。行ってみると…
「おはようございます恭介様♪お弁当つくってきたのですが、良かったらどうですか?」
あぁ…女神様…。
「ありがとう、腹ペコなんだ。いただくよ」
俺は快く返事をした。
「ふふ♪ではこちらへお座り下さい」
俺は亜季と愁が座っている正面、奏樹の横に座った。
「奏樹…大丈夫か?」
好きな子(亜季)の前では極度の上がり性の奏樹。顔面蒼白で、今にも倒れそうなくらい余裕がない。その奏樹がギギギと機械のような音をたてながらこちらを向いた。
「あ…きょきょ恭介先輩。だだ大丈夫でし」
…全然大丈夫じゃなかった。
2段になっているお弁当箱の1つを開くと、中から玉子焼き、唐揚げ、etc……男子が女子から貰いたい弁当の見本となるような、丁寧で綺麗なおかずが入っていた。
「うまそうだなぁ。じゃぁいたたぎます♪もぐ……うん、おいしい!」
「良かったです。作ってきた甲斐がありました♪」
恭介の感想を聞いて、より一層笑顔になる亜季。
(おかず食べてると米が食べたくなるなぁ…2段目か?)
そう思い恭介は2段目を開けようとする…が…、
「わぁ〜!!い、1段目だけで十分だろ!開けるなー!!」
さっきからジッと見ていた愁が慌てて恭介を制止する……だが時すでに遅し。
パカッ
「こ、これは……」
確かに2段目に入っていたのは御飯…だが、1段目にあったものとは明らかに違う。
男子が女子から貰うと確実に戸惑ってしまう、オニギリ(?)のような物体Xがあった。