学園の社長〜社長の連盟騒動〜-7
「ひょっとしてあなたが海底組合とやらの幹部?」
「違う! 我輩は潜水連盟の太平洋支部長の山崎だ。勝手に組合にするでない!」
怒られた。もうなんでもいいよ。とりあえあずこの男が錦田の言っていたお客さんって奴か。案外普通のオッサンだったな。
「ん? なんだその目は。どうやら我輩のことをまだよくわかってないみたいだな」
「そりゃあそうですよ。そもそも潜水連盟なんてものは聞いたことがないですし、何をしてるのかすらわかりません。もしかして、ただ潜水するだけの連盟ですか?」
俺は錦田の話を思い出す。確か海底を這っているとかいっていたな。
「違うわ。人間の新たな可能性を探るべく、海底の中を開拓していく連盟だ。ただ何も考えずに潜っているわけではないわ。お前さんが考えているよりもはるかに壮大な規模を誇っているのだ!」
そう山崎は啖呵を切った後、大きな音を咳払いをする。ちょっといい過ぎたのかもしれない。
「ふむ、まあよいわ。お前さんにこれから潜水連盟のことをみっちり教えてやろう。お前さんはこの後、友人との約束とかはないかね?」
「別に特に何も。ちなみに俺は帰宅部ですんで気にしなくても大丈夫っす」
俺は少し誇らしげにいう。
「うむ。それならよろしい。さあ我輩についてこい。さあ早速出発するぞ」
「出発ってどこに行くんすか?」
「なに、来て見ればわかる」
そういって山崎はよいしょ、とゆっくり立ち上がると入り口から出ようとした・
「おっと危ない」
入り口の前で山崎が立ち止まる。
「まだ行かないんすか?」
「実は錦田君からな、外に出るときは窓からときつくいわれてな」
「確かに。寮長に見つかったら俺まで問い詰められそうですからね」
転入早々に汚名を受けることを考えと冷や汗がでるな。
山崎は方向転換すると、入り口と反対方向にある開き式の窓に行き、しばらく外を見回した後に「よし、今だ」と窓を開いてすばやく飛び降りた。でかい図体のわりに俊敏な動きだった。
こうして俺たちは無事誰にも見つからずに窓から脱出することができた。前述のとおり俺たちの帰ってきた道と公園に通じる道以外は木々に囲まれていて、しかも寮の一階だったために目立たずにすんだのだ。
「これからどこに…」
俺は再び同じ質問をする。
「我が潜水連盟の太平洋支部の一つだ。潜水連盟について口で説明するより実際に見てご覧に入れたほうが早いだろう。君はきっと驚かずにはいられないだろう。私がどれだけ偉大な地位にあるのか。そして如何程に優れた日常生活を送っているのかをね」
その口調に、俺は錦田と同じものを感じた。錦田の客というのはこういうのばかりなのかよ。っておい。潜水連盟の支部ってことは…
「まさかその支部は海の中にあるわけ」
「その通りだ。よく分かったな」
「……」
どうやら俺たちはこれから海の中に行くらしい。これ以上質問しても無駄だろうと思い、俺は黙っておくことにした。
山崎は学園への道を通らずに、森林地帯を掻き分けて進んでいく
五分ほど進むと、森林地帯を抜けることができた。森林を抜けるとそこには整備された広大な空間があり、ハーブ園やキャンプ場への案内の看板があった。
「ここは一体どこだ?」
山崎は俺に効いた。自分で勝手に進んどいてそれはないぜ。
「ここは、島でも有名な公園のプレモーリ自然公園ですよ。ウチの学園の生徒がときどき散歩しにやってくるところです。観光客の多くもここに来ますよ」
現にここから見える原っぱの方を見ると、何人かのブレザーをきた生徒が五月上旬に開花したばかりのツツジ畑をスケッチしている。おそらくウチの学園の美術部員だろう。