学園の社長〜社長の連盟騒動〜-6
俺と滝沢は寮に入ったあと、
「じゃあな、俺部屋で課題やらなくちゃ」
「嘘こくな。お前がやるはずないだろ」
といつもどおりの別れのあいさつを終えた後で俺は自分の部屋に戻ろうとした。その時、俺の携帯電話が鳴った。見ると錦田からの電話だった。奴とは先日なにげなく電話番号&アドレス交換をしたばかりだった。
『君の部屋の窓の鍵は開いているか?』
なにやらよくわからない質問だ。
「ああ、今日は確か閉めてなかった。この辺に泥棒なんていないしな。それがどうかしたか?」
『少々の時間だが、君の部屋を借りていいか?』
「き、急になにいってんだよ」
『さっきの客が私の部屋に来るというんだよ。迷惑かい?』
「お前の部屋はどうした?」
『私の部屋は鍵をかけっぱなしにしていたんだ。窓から入らせるつもりだっただが窓の鍵もかかっていた。私は急用があって部屋には戻れないんだ。君の部屋の窓が開いているんならそこから入らせる』
「ああ、別にかまわんよ。好きにしてくれ。ところでお前は寮に帰らず今どこにいるんだよ」
「私は事情があって海の近くにいる。私の客はきっと寮の付近でまごついていることだろう。すぐに入れさせていいか」
入れさせるだと。本当に窓から入ってくるのか。俺は意味不明なまま自分の部屋の鍵を開けて
「!?」
ずんぐりとした巨漢の男が俺の部屋の奥にいた。俺に背を向けたまま床にどっしりと腰をおろしている。
俺は心臓が止まりそうになった。何故か俺の部屋にこんな奴がいる。これが錦田のいっていてた客なのか? 待てよ、そうすると錦田のレンメイやらシブやらの話は嘘ではないということになる。すると錦田は一体何ものなんだ? 大量の思考が俺の頭を混沌と駆け巡り、目の前の男に話しかけることもできずに俺はそ の場に立ち尽くしていた。
男は俺の存在に気づいたのか体をゆすってこっちのほうを向く。
見たこともないオッサンだった。年齢は四十後半から五十くらいだろう。少しさびしくなった頭髪丸めがねをしている。灰色のコートを着ていて、同じく灰色のぶかぶかのズボンをはいている。なにかの作業服かもしれない。
「君は一体だれかね?」
男は怪訝そうな表情で尋ねる。重くざらざらした感触が耳につくような低い声だった。
「ここの部屋の住人ですよ。」
自分の声が引きつっていることを自覚する。俺は間違いなくビビッている。
するとオッサンはようやく自分の立場に気づいたらしく、辺りを見回してからペコリと頭を下げた。
「いやいや、驚かせてすまなかった。我輩は泥棒じゃない。改めて聞くが君は本当にこの部屋のものかい?」
「はあ、そうですが」
なんで俺はこの男に狼狽しているんだよ。ここは俺の部屋なのに、まったく自分の情けなさにため息が出る思いだ。
「錦田君から話は聞いている。彼にはこの部屋で待っているよういわれてな」
あいつ勝手に他人を俺の部屋に入れやがって。人の部屋を待合室と間違えてやがるな。
「マジで窓から入ったんすか?」
「ここは一階だから容易に入れたのだ。正面口から入ると目立つと錦田君が聞かないんでな」
そりゃあ即刻寮長に見つかってたたき出されるだろう。ここの寮長は厳しいからなあ。
「君、錦田君と仲がいいそうだね」
「はい、一応奴は友達だと思います。ところであなたは一体誰っすか? 錦田に面識があるとか。するとまさかあなたは」
俺はさっきの錦田との会話を思い出した。